ラブストーリーを一緒に
『悪いんだけど、まだ着きそうにないから直接行ってくれない?』


「は?」


聞き間違いかと思った。


「直接って…」


『そのマンションの301号室ね。急いで行くから』


「―――あっ…ちょっ」


プチッと一方的に切られた後は、ツーツーと単調な機械音が耳につく。


もぉぉ〜っ!ほんっと自分勝手なんだからっ


はぁぁぁっと大きく息を吐くと、真っ白い空気のモヤに包まれた。


…ほんとに、うちのお母さんは世話がやける。


こんなことしょっちゅうなんだから、それに付き合う方の身にもなってほしい。


表向きは出版社に勤めるバリバリのキャリアウーマンだけれど、要は仕事のことしか考えてない。


わたしが物心つく前に離婚して、今は母一人、子一人。


詳しい事は話してくれないけど、離婚の理由は仕事のしすぎとみてまず間違いない。


毎日、早朝から深夜まで出っ放し、おまけに休日は昼頃までゴロゴロ、ろくに家事もしないとあっては…そりゃ愛想もつかされるでしょ。
(まるでおっさんの生活だもん)
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