ラブストーリーを一緒に
「ごごごごめんなさい…!!!わたし…てっきり、ハルカさ…香月先生は女の人だとばっかり思っていて…」


半分涙目でペコリと頭を下げると、苦笑いをして手を振った。


「あー…そう思ってる人が大半だろうな。一応覆面作家で売り出してるから」


そういえば、今更ながら表札が『香月』だったことに思い至った。


「本名…だったんですね…」


「そうよー?遥って名前だし、書いてるのが恋愛モノだからねー」


ケラケラと笑う母は無視して、わたしは興奮を抑えるためにスカートをぎゅっと握りしめながら言った。


「わたし、先生の『月だけが見ている』が大好きなんです!!!全巻持ってますし、映画も三回見ました!!!」


「あ、あぁ…サンキュ」


「あのピュアピュアな純愛を書いてるのが、こーんなこわもての野郎だなんて、だーれも思わないわよね」


もう…っ


一生懸命勇気を振り絞って言ったのに、お母さんのせいで台なしだ…!!!
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