ラブストーリーを一緒に
結局、なし崩し的に家のことはわたしがやるはめになって…


今日も、下校途中にいきなり電話でわーっと注文され、仕方なく制服姿のまんまで駆け付けてる。


「わたしが甘いのかな…」


ポツリとため息をつきながら、わたしは言われた通りマンションの中へと足を踏み入れていた。


…大体、重箱いっぱいに筑前煮を入れて持ってこいって、意味がわからない。


仏頂面で妙にお洒落にレイアウトされたエントランスをぬけ、エレベーターのボタンを押す。


近代的なこの建物の空間に、学校指定の黒いコートに学生鞄と、やけにどでかい紙袋を持ったわたしは明らかに浮いてるけど…しょうがない。


「301号室は…と」


妙に音の静かなエレベーターを降りると、目的の部屋はすぐに見つけることができた。


一番端の奥まった扉の上には301のプレート、横には『香月(コウヅキ)』と表札がかけられている。
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