ラブストーリーを一緒に
先生はそう言ったきり、腕組みをしたまま微動だにしない。


そのまま、自分だけの世界に入ってしまったかのように。


「先生…?」


な、なんなんだろ。


わたし何か変なこと…


いや、変なことしか言ってないかもしれないけど…


「せ―――」


もう一度呼びかけようとしたところで、わたしの腹の虫がぐぅと鳴った。




こ、このタイミングで普通鳴るー!?




「…おまえ…ムードねぇなぁ」


殻から出て来たように、鋭かった先生の表情がふわっと和らいだ。


真っ赤になったわたしの頭を、ポンポンと撫でる。


「ケーキ一個じゃ、足りなかったか?」


「け、決してそんなわけでは…」


いっそ逃げ出してしまいたいけど、先生の手の温もりがわたしをこの場に縫い付ける。
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