ラブストーリーを一緒に
すぐに先生の手はハンドルに戻ってしまったけど、温もりはそのままだ。


…わたし…先生に頭を撫でられるの、嬉しいみたいだ。


おかしいな。


もっと触れていてほしいと思うなんて…


「まぁ、おまえがそのシーンを気に入ってくれたならいい」


「え?」


先生は気が緩んだようにふぅっと息を吐いた。


「言ってただろ?言葉より態度に愛を感じるって」


低い声で紡がれる『愛』という単語が甘すぎて。


自分に対して言われてるわけでもないのに、身体が沸騰しそうなくらい熱い。


「今まで口説き文句ばっか考えてて、何も浮かばないままスランプに陥ってた。

…そりゃそうだ、造られた言葉にときめくわけがねーからな」


恥ずかしくて先生の方は見れないけど、声が優しいから困る。


「でもおまえに言われて、今回はできうる限り会話は省いて、情景描写と心理描写だけでやってみた」
< 90 / 138 >

この作品をシェア

pagetop