ラブストーリーを一緒に
「先生、ありがとうございます」


なんだか力が抜けたと同時に、ちょっとだけ先生との距離が近付いたような気がした。


ひょっとしてこれはわたしの希望的観測?


それでも前よりずっといい。


「…単純な奴だなおまえは」


そう言う先生は、グビッとグラスに口をつける。


その中身が烏龍茶だと思うとなんだか微笑ましい。




そう、この時のわたしはまだ知らなかったから。


先生がマスターに頼む『いつもの』は、本当はキープしてるウィスキーのロックだということ。


車で来る時はめったになくて、それこそ『烏龍茶』は連れがいる時だけのフェイクだということ―――
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