49日
「なんだ、言えないのか」


「……」


「おまえは?」


時枝絵里香の父親は犬飼の隣にいた麻里子にも目を向けた。


麻里子も犬飼と同様、答えることができず俯いた。


その様子を見ていた父親がふんと鼻で笑う。


「なんだ。誰も答えられないのか。だったら、私が当ててあげよう」


時枝絵里香の父親はそう言うと、一人ひとりの顔を覗き込むように目を向けた。


見透かすような瞳。


この人は知っている。


自分の娘が、なぜ死んだのかを……。


すると次の瞬間、父親はニヤリと笑った。


「あの子の亡霊を見たんだろ?」


「!!!!!」


ぼ、亡霊……?


麻里子たちの反応に父親はふふと笑った。


なんで?


なんで笑うの?


自分の娘を亡霊だなんて。


どうかしてる。


父親の思いもよらない言葉に麻里子は恐怖さえ感じた。


だが父親はなおも続ける。


「いつか、こんな日が来ると思っていた」


「?」


「いや……違うな。こうなればいいとずっと思っていた」
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