49日
「じゃあ、橘……あと頼む」


「う、うん……」


突然、話し手がバトンタッチされた。


てっきり犬飼が何かを話すと思っていた麻里子以外のメンバーたちは困惑する。


みんなこの状況についていくのがやっとだった。


橘は目の前に置かれた自分の水を一気に飲み干した。


そして、ふぅーと息を吐き出すと、ひとりひとりの目を確認する。


麻里子も彼と目があった。


「あんまり思い出したくないから一回しか話さないよ」


その言葉、その表情から、ただならぬ緊張が伝わる。


空っぽのグラスを握る彼の手は小刻みに震えていた。
< 391 / 458 >

この作品をシェア

pagetop