49日
男の目の前にたくさんの若者たちが現れた。


彼らは薄ぐらい部屋のなか、軽快なリズムに揺れている。


踊り方にルールなんてない。


何をしても自由♪


ここでは一人一人が主役である。


男は人と人の隙間を上手にすりぬけながらバーカウンターへと向かった。


「ビール」


「はい」


男が声をかけると愛想のいい男性店員がビールの栓を抜いた。


男は受けとったビールをそのまま口へと運ぶ。


ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ!


喉の奥に冷えた苦味が流れていく。


でもここ何日か、何を飲んでもウマイと思えない……


「よっ! ミツル!」


「おう」


カウンターでビールを飲んでいた男に2人組の若い男たちが声をかけた。


それに気付いた男……“菊地充”は軽く手を上げてこたえる。
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