「エスペランサエピテランサ」
この「魔法の卵」に花が咲いて、もし魔法が使えるようになったら、何するかなぁ。
綺麗になりたい。好きな仕事につきたい。えらくなりたい。お金持ちになりたい。ぜんそくを治したい。憧れの人と結婚したい。死後の世界を探索したい。月に住んでみたい。猫になって、猫としゃべってみたい。男になってみたい。大嫌いな人をこらしめたい。いや、面白くないレベルの低いギャグで笑わせたい。好きな人を生き返らせたい。核爆弾を消す。
・・・なんだ。意外と大した事ないや。ちっぽけだなぁ。
人を笑わせたいのか、それだけが救いだ。人間サービス精神がなくなったら、おしまいだってさ。

そんな事を考えながら、毎日意味不明な呪文を唱える。
「エスペランサ、いや、エピテランサ」
気づけばもう三年だ。365日×3年で、1095回だ。
あの少年のささやきは、一体なんだったのか。
あんなに意味を知りたがっていたのに、1000回を超えたあたりからだろうか、
もうどうでもよくなってきている。

パン生地と闘うのも、やめた。闘う気力が失せた。
あごも疲れるし。あごが強くなりすぎて、誰かの耳をかみきったら大変だ。
それは建前で。本音は
勝てる方法はわかったけど、自分にはできない、という諦めの気持ちと、
そもそも勝ちたい、と思った時点で、負けだ、という冷めた気持ちと、
自分は女である、という誇り。

そんなわけで、今日もやるべき事と言えば、サボテンに向かって呪文をとなえる、ただそれだけ。
いつになったら花が咲くんだろう・・・。
そう思って、今朝水をやろうとエピテランサを覗き込んだら、二つになっていた。
芽がでていたのだ。
これは予想外だ。
こういうやり方もあったのだ。
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