HAPPY DAYS
「オレ、紀子に謝りたくて…すごく紀子のこと気になって仕方なかった」


「いいよ、私、信じてるから」


「紀子…」


「もういいの、何も言わないで」

「だって…」


花巻くんの唇を自分の唇で閉ざした。
私の背中に回した腕が、震えている。


花巻くん、大好き。





そっと体を離すと、花巻くんは
笑いながら、手を繋いで来た。

「信じらんねえ、またキスしてきたし」

「だって、キスして欲しそうだったよ、ね?」


私が横目で見ながら促すと


「…うん、キスしたかったよ、わ〜有り得ねぇ会話」


と吹き出した。


「…花巻くん、あのコとも…キスしたかった?ってゆうか、した?」


「え?」


急に目が泳ぎ出した花巻くん。


この時はまだ、私も笑っていられた。


「キスしたんでしょ、白状しなさい」


「…そんなことしてねえから」


許してあげて、やり直すつもりなのに、素直じゃないんだから。



「キスしたんでしょ?それともそれ以上なわけ?」


「あ…う…」


挙動不審。
しかも明らかに、キス、じゃなくて、「それ以上」に反応したよね?


「それ以上のこと…があったの?」



「い…いや!」



「あったのね?」



…無言。



「最後までしたの?」


自分でもなんてダイレクトな情けない質問だと、今なら思える。
でも、その時には、それ以外言葉が出て来なかった。


そしてもっと情けない事に
花巻くんはその質問に頷いた。


嘘!


嘘じゃないなら嘘つけよ!


心の中では悪態が次から次へと湧きだし、
目頭からは涙が噴き出した。




その時、ノックの音がした。



もうここに私がいる理由はない。



ノックの主はロックな山浪くん。彼が来てくれてよかった。



私は逃げます!



紀子は馬鹿でした!






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