HAPPY DAYS
「御仲間の言い分はともかく、僕は花巻の赦しを請いたいね。…僕たち幸せになってもいいかな?」


タカノの御託はどうでもいい。オレは絶対、紀子に何か言わなきゃならない。
でも…何て?


「紀子…クッキーうまかったよ、ごちそうさまでした。それから…いや、何でもない。…ありがとう」


今まで当たり前みたいに食べていた、紀子のクッキー。
もう2度と食べれない。


付き合い出したきっかけも、バレンタインの手作りチョコだった。


二人で観た映画。

たわいもない話。

初めてのキス。

初めての彼女。

初めてのさよなら。



初めてだからうまく伝えられなくても仕方がないよな。



二人にしか通じない冗談も、もう言う相手がいなくなるんだ。



はにかむ紀子。

泣いている紀子。

勉強を一緒にしてるとき、シュシュをプレゼントしたら喜んでたよな。


あ、もうダメかも。


泣きそう。


「紀子…じゃなくて…瀧澤。また、明日」


オレはポケットに手を入れてその場を去った。



明日からは「瀧澤」なんだな。





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