HAPPY DAYS
携帯が鳴った。

「もしもし?」

「毅くん?瀧澤です」

「…ああ、どうも」

「今、大丈夫?」

「少しなら。今、勉強中だから」

「そう、ありがとう。部活だけど、吹奏楽は正式に退部してきたから、軽音に入部します」

「え?そうなの?…タカノと一緒じゃなくていいの?付き合ってるんでしょ」

びっくりしたなんてもんじゃない。

何をして軽音に転部だ?

「あんな現場までみんなに見られて、何で軽音に来るのか分からないって言いたい?」

瀧澤の問い掛けに思い切り

「そりゃそうでしょ」

と答える。

「花巻くんと付き合ってないと入部資格なし?」

「いや、それはないけど。…普通自分がヤでしょ?」

返って来ない返事。
何となく瀧澤が受話器向こうで笑ってるような気がした。

「別に。では、改めて明日からよろしくお願いします」

瀧澤の凜とした言いっぷりに圧倒されながら、携帯を切った。


「すみません」

真知子さんに謝ると、真知子さんは目を合わせないまま頷いた。

「真知子さん?」

「なに?」

「聞いていい?」

「今の女の子の気持ちを?」

「…はい」

「じゃあその代わりに、私にも教えてくれる?」

「何を?」

「先に私が答えるよ」

真知子さんの雰囲気が余りにいつもと違う。
今の電話での瀧澤の会話が聞こえてたから?
だとしたら、ちょっとは気になる?
女の子との会話を気にしてるとしたら、多少はボクを男として見てくれてる?かな?


なんか期待し過ぎてしまう。




「今の子はこの間話した…」

「うん、そんな気がした」

「元々は吹奏楽部だったんだけど、吹奏楽辞めて軽音来るって言ってたんだけど、ボクの友達と結局別れちゃったんです。で、吹奏楽の部長と付き合い出したのに、うちに転部するって今言ってきて、現在に至る」


「そりゃ分からないね。ただ吹奏楽の部長と付き合ってるって言っても、気持ちは軽音の誰かに、だよね?」


「誰かっていうか、元カレの純ですよ」
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