HAPPY DAYS
君代を家に送ると、またまた君代ママが夕飯を勧めてくれる。


料理上手な君代ママの夕飯に、文字通り味をしめて、
その日も乞われるまま、大野家のダイニングテーブルに着いた。


君代ママがせわしなく支度をするのを、君代を促して手伝わせると、意外にも君代はかいがいしく手伝い出した。


ダイニングで一人座っているから、退屈になって、部屋を観察することにした。


きちんと片付いたリビングと続き部屋になっている。


リビングにはテレビとブルーレイがあったが、何故かビデオデッキとテープが置いてあった。


そこへ君代ママが、筑前煮を持ってセッティングに来たから


「ビデオもあるんですね」

と聞いた。


「あら、君代からは聞いてない?君代のバレエコンクールのビデオなのよ。ディスクに落とさないとと思いながら、なかなか時間が取れなくて」


「君代ちゃん、バレエやってるんですか?」

「中3まで、ね。バレリーナになるのが夢だったのよ、何度も入賞したし」


「高校受験で辞めたんですか?」


君代から聞いてないことを、君代ママから聞くのは、ホントに後ろめたかったけど、
聞かずにはいられなかった。


「違うの。留学するつもりだったから、辞めなかったら受験はしなかったわ」


君代ママは思い出したように溜息をついた。


「それから君代は荒れて荒れて…、今、君代が家にかえって来てくれるのもホントに純くんのお陰よ。ありがとう」


ショックだった。


あんなにオレに心を打ち明けてくれてると思っていた君代が、
君代の人生の中でも一大事だった出来事を秘密にしていたこと。


オレは独占欲が強いのかな。


多分君代が言わなかったのは、そんな話になるような流れがなく、オレが話せなくしてたからかもしれない。


もっとうがった見方をしたら、
オレが瀧澤に進路について相談出来なかったみたいに、
ホントにはオレに打ち解けてなかったのかも。



いや、やっぱ、こんなこと思うオレって、束縛キツイ嫌なカレシかな?



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