HAPPY DAYS
「…あのね、君代が生理来たのは中2から中3に上がる春休みだったの。それまでは痩せていて、胸とかもなかったのに、急に大きくなっちゃって…」


君代の胸はそれから膨らみ続け、今の大きさにまでなったそうだ。


「どんなに痩せても胸が痩せなくて、バレリーナになる為に小さくする手術をしようかと、真剣に考えたくらい」


「胸が大きいとバレリーナになれないの?」


「たまにちょっと大きいかな、って人はいるけど、私みたいな胸の人なんて、バレリーナとしたら全然ダメ、失格なの」


それから君代は悩んで悩んで、悩んだ末にバレエを辞めた。


「辞めることはなかったんじゃない?好きだったんでしょ?」


「好きだったよ。だから辞めるしかなかった。結婚まで考えたカレシと、結婚やめたからって友達に戻れる?私、バレリーナになることが人生の全てだったのに、中途半端にバレエと向き合うなんて出来ない、出来なかったの」


君代の目から涙が零れた。


バレエを諦めた時もそうやって一人泣いたの?


君代の一途な性格は、オレに対する態度からも見て取れる。


どんな辛い思いだったか、まだ夢のないオレにも、察しはつくよ。
暫く二人とも黙っていた。


そしてどちらからともなく笑い出した。

「でもさっきの『過去の男関係?』って食ってかかるのはなかったよな」


オレは笑いながら言った。


「だって純、初めの頃、私を避けまくってたでしょ。絶対、誰とでもする、みたいに思ってた」


「そんなこと…」


思ってたかもな。


「じゃあ君代の男性遍歴はまたの機会にゆっくり聞くよ」


君代は笑いながら答えた。


「いうほどないよ。純、ヤキモチとかないの?」


タカノを思い出した。タカノに対する苛々はまさにヤキモチなのかも。
いや、あんなやな奴いらついても当たり前だって。


「君代はヤキモチ焼きだよ。こないだのヒト…紀子さん、だっけ?気になるもん」


「瀧澤はもう新恋人いるから」

「え?そうなの?そんな簡単な風には見えなかったけどな」



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