HAPPY DAYS
「君代、バレエ恋しくない?」


「…時々無意識に踊ったり、パを並べてたりする、グリッサード、グリッサード、パドゥブレ、とかね」


「ちょっとだけ踊って見せて」


恥ずかしがる君代を立たせると、君代は爪先だって動き出した。


君代の腕が柔らかく動き、よく分からないオレの目にはただ美しく思えた。


「すごいな、君代。何て言うか…綺麗だよ」


君代は照れてオレの肩を叩く。


「何て言う踊り?」

「ジゼルのバリエーション。本当はもうちょっとあるよ」

「ジゼルって聞いたことある。どんな踊り、ってゆうかストーリーなの?」


「ジゼルは世界中のバレリーナが1番好きなバレエっていうくらい、ステキなバレエなの。
ジゼルは村娘で、アルフレヒドって若者と出会って恋人同士になるの。だけど…」


アルフレヒドは実は身分を隠した王子様で婚約者もいて、
捨てられたジゼルは悲しみの余り死んでしまう。

結婚しないで死んだ娘はみんな、お化けみたいな妖精「ウィリー」になってしまう。

そしてジゼルが死んだ悲しみに一人御墓参りに来たアルフレヒドを、
他のウィリーが踊り殺そうとする。
それを今はウィリーになった、

「ジゼルが庇うの…」



「君代が踊ったとこは?妖精のとこ?」

「違うよ、恋してる時の人間のジゼル。妖精のところなんて、丸で体重がないみたいに、ホントに人間じゃないみたいに踊るの、だから…」


君代は何処か痛むみたいな表情をして口ごもっていたが、
無理矢理作ったような笑顔で続けた。


「だから胸が大きいと踊れないよね」



「君代…」


「でも今は、純がいるもん」
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