HAPPY DAYS
オレがいる?

オレはバレエの代わり?

君代にとってそんなにすごい存在なの?


「バレエ辞めた時、心にぽっかり穴が空いたみたいになっちゃって、それを埋める為に、ほら、ママがよく言うじゃん荒れてた時期って。でも遊んでも遊んでも埋まらなくて、ホントにきつかった」


「今は?」


「今は純がいるもん。純がいなかった時なんて、誰と一緒にいても寂しかった。純は君代にとって、中学生の時から王子様だったから。ずっと、ずっとこのまま、一緒にいられたらいいのになぁ」


君代は抱きしめたクッションに顔を埋めてしまった。


長い沈黙。


「…するか」


「え?」


「オレ等大人になってもずっとこのまま一緒にいたら、結婚、するか」


「純」


クッションから離れた君代の顔は涙でグショグショだった。
付け睫毛も取れて頬っぺたにくっついてる。

オレはそれをつまむと君代の手に持たせ、テイッシュで涙を拭いてやった。
丸で赤ちゃんの世話をしてるみたいで、愛おしい。


君代の華奢な肩を抱きしめて、
額にキスをした。


「君代、化粧しない方が可愛いよ」

「え〜」

「そだな、眉毛とグロスくらいにしとけよ。付け睫毛とかは要らないよ」


「君代、バレエやってたから付け睫毛つけるの超上手いのに」


唇を尖らす君代。


「オレは本当の素の君代と向き合いたいの。他の時は好きにしていいから、オレと会う時はナチュラルでお願いします」


オレがふざけた調子で頭を下げると、君代は笑い出した。


泣いたり笑ったり忙しいコだなぁ。赤ん坊みたいな無垢なとこもある。



その日は二人で寄り添って、それで充分だった。


君代と通じ合えた喜びがあったから。



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