HAPPY DAYS
「毅くんて不思議だよね」


「そう?」


「仲良くなる前は、もっと怖い攻撃的な人だと思い込んでた、髪がトサカだったし」


「トサカ?」


「でも、実際は優しい…男っぽくない、繊細な人だった」


「男っぽくない、て」


「好きになっちやったかも」


「衝撃的告白」


「大好きになっちやったかも」


「からかうなよ」


ふざけてると分かっていても照れ臭い。
顔を隠すと、その手を瀧澤が除けた。
目の前に瀧澤の顔があった。真っ直ぐな瞳でボクを見ている。


「なんてね」


「純にももっと素直になって今みたいに言えば、自分が楽だよ」


「そんなこと言って、毅くんは実際、好きな人の前では素直なの?」


素直かだって?真知子さんに対して素直どころか、


「ひねくれてるかも」


「…好きな人いるんだ。どんな人?」


「え?…真面目で優しくて、綺麗な人…何言ってんだよ、全く」


「付き合ってるの?」


「いや、片思い。もう長い」


「この学校の生徒?」


「元生徒、今は大学生。もうええやん、やめとこ」


何故こんなにぺらぺらと瀧澤に話したのか、真知子さんに素直になれないから、こんなところで打ち明け話?


でもここのとこうまくバランス取れてないとこがあったから、ちょうどいいインターバルが取れたのかもな。


瀧澤が手を差し出した。


つられて手をだし握手。


「ありがとう。毅くんも頑張れ」

「まずは明日の予備校かな」


「そうだね」


握った手が華奢で、白くて、でも力のこもった握手は瀧澤らしかった。


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