HAPPY DAYS
「あ、ボク、母さんに頼まれた買い物があった、今のうちしてくる」


毅が突然、席を立った。
呆気にとられるオレを尻目に


「私も付き合おうか」


と立ち上がる瀧澤。


毅はそれを制して


「すぐ戻るから二人で待ってて。ごめん」


と慌てて立ち去った。


残された二人。
仕方なく席に腰を下ろす瀧澤に、どう対処していいのか分からないオレ。


メニューを見ながら


「プリンとか食べる?」


と話し掛けた。


「…うん」


「おごる」


「じゃ、アラモードにして」


…瀧澤にしたら珍しい。今までならご馳走するって言ったら遠慮がちだった。


「プリンアラモード2つ下さい」


オーダーして向き直ると、
目の前の瀧澤が泣いていた。


「…た、瀧澤?」


「え?」


「何?アラモードやだった、とか?え?」


「?」


「何で泣いてるのかな?なんて聞いてもいいかな〜」


「あくびしただけ。退屈だったから」


退屈だったからあくびしただけだ〜?
人がこんなに気を使っているのになんて奴だ、こいつは。


「私が泣いていようが、どんな気持ちだろうが、花巻くんにはどうでもいいんじゃないの?だから私達別れたの」


「い…いつそんな事オレが言ったんだよ」


「言わなくたって、そのイケメンぶった御大層なお顔に書いてあります」


「イケメンぶってなんかねえし」


いや、ぶったかも。


「オレ様はイケメンだ〜みたいなオーラしか感じたことないけど」


「ねえ、ねえ。瀧澤こそいつもすましかえって、優等生の高慢チキチキバンバンじゃねえかよ。『私がいないと世の中が回らないわぁ』みたいな顔して」


「だからあの爆乳娘と浮気した正当な理由があるわけ?」


「そ…それは…」


「私…」


瀧澤は涙で鼻を詰まらせた。今度の涙はあくびのせいではない。
< 151 / 219 >

この作品をシェア

pagetop