HAPPY DAYS
毅 DAYS 13
ボクはCafeを飛び出すと、春めいた町の景色に出くわした。


霞がかった空は優しい色だった。


はっきりしない空模様だって?


晴れや雨より曇りが好き。


何だってはっきりさせるばかりかいいこととは思えない。


ボクが二人を残した言い訳は、あながち嘘ではない。


一人暮しにちょうどいい部屋も探さなきゃだし、母さん達に結婚祝いもしたかった。


プラプラ町を歩いていたら、
歌田コズエさんに会った。


真知子さんの軽音バンドのボーカル。


歌田さんは小柄でおっとりとしてるが、度胸とセンスは抜群で、一言では言い表せないけど、ペース感が全く人と違う。


今はOLさんだ。


超マイペースな歌田さんに、普通のOLなんてできるの?と心配したものだ。


「やっぱり毅くんだぁ。大きくなったね」


「歌田さん、なんか、ますます綺麗になったみたい」


「そうなの。綺麗になりすぎたよね、私」


相変わらず、冗談か本気か掴めない人だ。

でも中身の変わらない部分を感じて、懐かしさと嬉しさに充たされた。


「毅くん、歌、歌ってる?」


「あ、いえ。今の軽音にはボーカルいますから」


「え?毅くんより上手いの?聞いてみたい、聞いてみたい。カナメ祭は5月になったよね?」


都合を聞くと予定が合わなかった。


余りに歌田さんが残念がるので、19日のボンのライブに誘った。


「カナメ祭もリハ行けそうなら、せめてリハ行くからね。じゃ19日ね」


歌田さんはこれからデートだって。


本当に春そのもの。





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