HAPPY DAYS
自転車を漕ぎながら、二人にばかり素直を押し付けた自分を、省みた。


真知子さんに対して、いつまでガキみたいな態度を取るつもり?


それより自分の気持ちをアピールしていかないと
真知子さんは、また誰かと付き合ってしまうかも知れない。


ヒロシさんと別れてからも、少なくとも3人と付き合っていた。


直前の人は確か、3ヶ月前に別れたから、そろそろ新しい恋がスタートしてもおかしくないのだ。


その相手が誰だかヤキモキするくらいなら、自分が名乗り出ればいい。


自転車、方向転換。


真知子さん宅に向けて出発。


その前に真知子さんに花を買おう。


真知子さんに良く似たカサブランカを。


匂い立つカサブランカに、愛を示すピンクのリボンを結んで、ボクの自転車には、真知子さんそのものが積まれていた。


立ち漕ぎして30分。


真知子さんのうちの前。


急に気持ちが萎える。


花を買ったのは、渡すため。直ぐに渡さなければ枯れてしまう花に、躊躇いを取りのけて貰うためだった。


時間は7時過ぎ。


まだ帰ってないかも知れない。
時計と、携帯と、家のドアと、まだ暗い明かりのついてない真知子さんの部屋の窓。
何を見ても答えは見出だせない。


「毅くん?」


一瞬、カサブランカの香が声になったのかと思わせた。


振り向くと、カサブランカよりも優しい様子の真知子さんが、少し不思議そうな顔をして立っていた。


「毅くん、どうしたの?」


「…真知子さんを待ってた」


言えた。
まずは第一関門クリアー。


「こんな時間に?本当は今日はゼミのコンパだったんだよ。帰って来てよかった。夕飯まだでしょ?うちで食べる?」


「突然じゃ迷惑だから」


「じゃあ、外で二人で食べようか」


思い掛けぬデートの誘い。


「ボクのおごりなら」


第二関門クリアー。


素直を頑張れてる。


「え〜?毅くんに?いいよ、いいよ」


「ダメ。真知子さん、今日はボク持ちでお願いします。…じゃないと食事しにくいから」




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