HAPPY DAYS
紀子 DAYS 10
キスをされ、抱きしめられ、懸命に返した後、花巻くんの温もりが私の髪に、肩に、唇に残る。

愛してる。


…だけどさよなら。


どうやって家までたどり着いたか、記憶がない。


一人、部屋の隅で膝を抱えていると、花巻くんに掴まれた手首が未だに痛い事に気付いた。


花巻くんもまだ、私を好きなんだ。


でも、そんな花巻くんに身も心も与えた君代ちゃんの存在が、
私の出した結論を後押ししてくれる。


予備校で私にキスした花巻くんは、今まで私は知らなかった花巻くんだ。


華奢な体なのに、やはり力はすごかった。


男の人なんだ。


君代ちゃんと過ごす時はどうなのだろう。
切ない思いに胸が痛くなる。


忘れなくては。


忘れられるのだろうか。


とにかく、タカノくんとも別れよう。
毅くんともリセット。


次は花巻くんを忘れる為ではなく、自分の為にいい恋をしなくちゃ。


涙でぐしょぬれの顔で無理矢理笑顔を作ると、
それでも幸せになれるような気がする。


笑わなくちゃ。


笑ってさよなら。


ありがとう。


初めて愛した人。


私の為に涙を流してくれた人。


お互い、幸せになろうね。





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