HAPPY DAYS
君代パパは今日も遅い。

夕食後、居間にいて3人でテレビを見ていた。
何だか落ち着く。
君代がグレープフルーツを剥いてくれた。
ルビー色の果肉を直接、口に入れてくれる。君代ママもいて照れ臭いが、正直、こんな楽しんデザートなんて初めてだ。

「純、指かじらないで」

「だから、一人で食うって」

「ダメ、手が汚れるもん」

君代はオレの口に次々にグレープフルーツをほうり込む。


君代ママが席をたった時、
二人きりになるやいなや、オレは君代に頭を下げた。

「ごめん、傷つける気はなかった」

「傷つかないよ、だって純は私のうちに来てくれたし…」

「強がんなよ」

オレはグレープフルーツ果汁まみれの君代の手を掴んだ。

いつでもオレを信じて待ってくれてる、バレリーナ。
泣き虫の妖精。
甘くて切ないイチゴミルク。

全てのベクトルがオレに向かってる。

それに応えよう。

「…純、愛してる」

君代がオレのあごにキスをした。

「酸っぱいね」

「…グレープフルーツ食べさせる人が下手くそだからだよ」

「ひどい」


君代は笑いながら、タオルで顔を拭いてくれた。

自分も手を拭くと抱き着いてきた。柔らかな細い腕がオレの首に巻き付く。グレープフルーツの香がした。

「だめだよ、ママが戻るよ」

「だめぇ、もうちょっとだけ」


全く。君代はまだまだ大きな赤ちゃんだ。
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