HAPPY DAYS
オレが一人で、低い次元の期待に捕われていた同じ時間、同じ場所で
君代はずっと
責めることなく、オレの謝罪なり言い訳なりを待っていたのだ。



嘘をつくのは嫌だけど、傷つけるのも不安にさせるのも嫌だ。


だからオレは黙ってみた。


それはそれで、最低な行為ではあるけど。


少しの沈黙…。


「私…純にとって何?」


「何…て?君代は君代でしょ?」


「そうじゃなくて。…彼女なの?それとも…セフレ?」


セフレって何だ?スポーツのポジションみたいな感じ?
キャッチャー=女房役な雰囲気の言葉だとしたらそっちかも知れないし。


「彼女だよ、…でも念のためにセフレって何?」


「え?マジ?」


急に君代が笑い出したので、オレはちょっとホッとした。ご機嫌が直ったのだと思ったから。


君代はかなり長い間一人でウケまくっていたが、しばらくして落ち着くと


「純、君代が要らなくなったらいつでもそう言ってね」


と、優しい口調で言った。

何でそんな寂しげに話すの?

オレの頭の中から、紀子の事も本能に関する事も全部一気に抜けた。

その時のオレには、君代へのいとおしさしか無かった。

泣かせたくない。

待たせたくない。

でもそんな事ばかり繰り返す、自分への責めをも、痛感していた。



「…結婚しようって約束したよな?そんな簡単には嫌になれないよ」


「気持ちが変わらなかったらね、って約束だったよ。変わらなかったらでいいよ」


「変わらない」


「そう言ってくれて…ありがとう」


「…」


そんな諦めたような言い方で微笑まないで。
寂しげな君代を見ていると、
オレの方が悲しくなる。





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