HAPPY DAYS
「君代、今週の土曜日のライブ…みんなに紹介するから、絶対行こう」


苦手な分野だけど、君代が喜ぶことは何でもしよう。
待ちぼうけの罪滅ぼしに。


案の定、君代は一気に嬉しそうな顔になった。


「いいの?」


「うん」


「何着てこう」


「ライブだし、動きやすい恰好でおいで。ライブ後の打ち上げも行くと遅くなるし、君代のママにはオレからお願いするから」


「そんなの平気だよ」


「ダメ!女の子の親は絶対心配なの」


「はい、純」


さっきまで沈んでいた君代の顔が、キラキラと輝き出した。
そう、君代のこの笑顔が見たかった。


「君代、すごくかわいいよな」


「純もすごくイケメンだよ」


「バカップルだな、オレ達」


「バカなのは君代だけ。純はカナ東じゃん…ちょっと天然入ってるけど」


「?」


「いいの、純のそうゆう、王子様なとこが好きなの」


君代がオレの膝に乗って抱っこされてきた。
いつもの甘い甘い花の香。


「君代、香水つけてる?」


「つけてない。臭いのダメなの。タバコも臭いのは吸わないもん」


「いつもいい匂いがするのは?」


「シャンプーじゃないかな。いい匂い?」


「うん、すごく」


「もっと嗅いでいいよ」


「犬みたいだな」


オレは君代の綺麗な髪の毛に顔を埋めた。サラサラと絹糸のような感触。
はしゃぐ君代を見ていると、充達感を覚える。
正しい事をしたと思った。



例え、紀子を病院に置き去りにしたのだとしても。



だって身近な賢人が言った。


恋愛なんてエゴイスティックなものだ、と。





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