HAPPY DAYS
「毅くんて、お母さんとは仲良し?」

「まぁ、割と」

「ふぅん、なんか今時の若いコな感じ」

「瀧澤だって今時の若いコに違いない」

瀧澤はニコッと返事がわりの微笑み。

「でも私は…最近あんまり母とうまくいってなかったかも」

「そうなんだ」

「…なんで私の親だけ、こんな人なんだろうって思ったり…」

瀧澤みたいなことを、ボクも父さんに対して思ってたのを思い出した。

親否定の苦しさは子供しかわからない。

「だから、母がこんなことになったのも私のせいみたいな気がして…」

瀧澤の目に灰色の陰。

「ママなんていなければいいのに…って思ったりしたから…」

段々声が聞こえないようになった。

ボクは瀧澤の肩に手を回し、抱き抱えるようにした。

気持ちはわかったよ、大丈夫だよ、という思いをこめて。

二人は暫く黙ったままでいた。




「…瀧澤、そのオニギリ美味しい?」

「うん」

「しっかり食べなよ」

「うん」


淡いグリーンのカーテンの向こうから、瀧澤のお母さんの規則正しい寝息が聞こえてくる。


「お母さん、手術成功して良かったな」

「うん」

瀧澤の視線とボクの視線とがぶつかった。

真横にある顔と顔。

でも1番近くにあったのは、ボク達の心だったみたい。

瀧澤とボクは拳と拳を軽くぶつけ合ったのだった。





< 180 / 219 >

この作品をシェア

pagetop