HAPPY DAYS
学校に帰るには遅すぎるし、家に帰るには早過ぎる。


部活にだけ帰るか?


そんな時、ボクのケータイがなった。


純からだ。


少し悩んだが、取り敢えず話すことにした。


「もしもし」


「毅?今電話大丈夫?」


「うん、もう病院出たから」


「そっか…瀧澤は?」


「瀧澤は病院」


「毅…」


「どうした?」


「オレ、病院には戻れないって電話するつもりだった」


「だから?」


「…いや、毅がもう病院を出ちゃってるなら、どうしようもないか」


ボクは純の話に猛烈な苛々を感じ、黙って電話切るか?的な衝動を抑えるのが大変だった。


「ああ、どうしようもない。瀧澤に伝えたいなら病院に電話するか、ちゃんと本人に伝えにくるかしろ」


言ってしまってから、ボクには純にそんな事を言う権利がないのだと、急激に後悔した。


「…そうだね。悪かった。オレ、毅に頼りすぎた。…あと、来てくれてありがとう。それ伝えたかったから」


純の口調が沈むのが分かる。だけど、どうしても抑えられない感情を、ボクの中に発見した。


怒り?


何故?


「純」


「なに?」


「純はもうちょっとまともな奴だと思っていたよ」


返事がない。純が打ちのめされているのが、音のない受話器の向こうから伝わってくる。


ボクがこんなこと言うなんて自分でもびっくり。


「じゃあな」


電話を切りながら、純への相反する二つの気持ちが、巴になっていた。

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