HAPPY DAYS
瀧澤に毎日電話をしたのは、そんな停滞から抜け出したい、気持ちがさせたのかも知れない。


でも、純を失った瀧澤には頼る家族もいないし、なんとなく人事ではなかった。
妊婦の母もいるし。


夜9時。


瀧澤は病院では携帯を切っているから、9時なら携帯が入ってるだろうと思ってかけた。


5回コールしてから、瀧澤は出た。


「大丈夫?」


電話の度にこう聞くのが、挨拶がわりになっている。


「…大丈夫…じゃないかも」


いつもと違う返事に、ちょっと戸惑う。


「どうした?お母さん調子悪い?」


「…今日…手首切ったの」


「え?」


「私、もうどうしたらいいか分からない」


最後は涙声でかすれてしまい、よく聞こえない。


「瀧澤、今家?」


「うん」


「じゃ、待ってて。ボク、今から行く」


「でも…」


「心配だから」


瀧澤はますます涙で言葉にならない。


「とにかく、待ってて。一人じゃないからね」


ボクは自転車を瀧澤家に向けて走らせた。





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