HAPPY DAYS
水族館デートの帰り、瀧澤を後ろに乗せて来た、瀧澤の家。


一カ所だけ灯が点っている。


真っ暗でないのが救い。


ボクはこ洒落たアンティーク風のチャイムを鳴らした。


柔らかい音。


泣き腫らした目の瀧澤が、それでも精一杯の笑顔で出迎えてくれた。
瀧澤、強いな。


リビングは白い家具に溢れて、ベルサイユな雰囲気。猫足のソファーに座ると、まさにロココな薔薇の花満開のティーセットが、更にロココなトレーに載せられてきた。


余りに女の子な空間に居心地は…、落ち着かない。


でも金糸で縁取られたクッションは、意外に寄り掛かった感じは悪くない。


それに瀧澤がいれてくれた、甘い香のハーブティーも、気恥ずかしいティーカップにかかわらず美味しかった。


しばらく沈黙。


慌てて駆け付けた理由も忘れて、こうして二人で向き合ってお茶を飲んでる。


でもそれが何となく、気持ちが休まるのだ、このベルサイユの鏡の間でさえ。



< 193 / 219 >

この作品をシェア

pagetop