HAPPY DAYS
同情されることは嫌いだ。

だから同情の色を顔に浮かべ、私を見つめる君代、大嫌いだ。


嫌でも仕方がない、それが私の仕組んだ罠なのだから。


だから私は更に、伏し目がちにしながら、指を目尻に置いた。


明らかにわざとらしい仕草にもかかわらず、君代は慌ててハンカチを差し出す。


いかにもハンカチを持ってなさそうな女から、そうゆうことされるといらつく。


無言のいい女アピールを饒舌に感じてうんざりするから。


「…紀子さん、大丈夫だよ。みんなついてるから」


「…そうね、母が救急車で運ばれた夜も、花巻くんが飛んで来て、一晩中肩を抱いて付き添ってくれてたし…あ…ごめんね…そんなつもりじゃなかったのよ…」


矢羽根が突き刺さったような表情の君代をみて、いい気味だと冷やかな心で思った。


なのに、首を振りながら君代は一生懸命笑顔を作って見せる。


「謝らないで」


「でも…あの時は君代ちゃんと付き合ってたのに…私ったら…深夜に呼び出して…」


「仕方ないもの、心配…だし。純はそうゆう優しい人だから」


「そう?じゃあよかった。あの時花巻くんがずっと抱きしめてくれたから、頑張れたの…。ちょっと強すぎて痛かったけどね」


と冗談ぽく言い足すと、君代は目を見開いて花巻くんを見た。






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