HAPPY DAYS
「別にそうゆう意味で抱き合った訳じゃないのよ、病院だし…あくまで友情」


自分で言い出した嫌がらせなのに、あの時支えてくれた花巻くんの腕の力強さを思い出した。


花巻くんの体温、花巻くんの胸の意外な厚み、首筋から漂う匂い、額に触れた唇…


ふと我に返ると、傍らには明らかな嫉妬の表情の君代。


思い知ればいい。


私はあなたに対してずっとそう感じて来たのだから。


「…ごめんなさい。純くんはもう私に対してそんな気持ちないからね、安心して」


「…紀子さんは?」


「え?」


「紀子さんにはそうゆう気持ち、もうないって言える?」


「…全くないって言ったら嘘になるわ、つい最近まで付き合ってたのよ、私達」


良心が痛むように、誰が私達の間に入り込んだのか、思い出せるようにゆっくり話し出す、悪魔のように。


「好きだったし、…大切にしてくれてたし…」

意味ありげな思いだし笑いを付け足してやった。

「でも今は、山浪くんが支えてくれるから、大丈夫。いろんな意味で心配しないで」


寧ろ心配を掻き立てた話を終え、再び親切なお姉さんに戻ったが、ぎくしゃくした表情の君代を見れば、向こうは簡単には気持ちを切り替えられないでいるのがわかる。
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