HAPPY DAYS
山浪くんが眠たげに

「布団ある?敷くよ」

と言い出したので

お客様用のベットルームに案内するからと、二階の階段を上り出した。二人きりになるの避けてなかった?

「…瀧澤」

「なに?」

「さっきあの子と話してたでしょ、ちょこっと聞こえたけど、あれ、やめなさい」

「はい」

「お?素直」

「そのかわり…山浪くん、私と付き合ってることにして。あの子の前では」

「え?」

「嫌なら私も嫌」

口ごもる山浪くん。
回転の早い彼が言い返せないでいるのを見ていると、気持ちがたかぶる。


私は更に顔を近くに寄せた。

山浪くんは驚いて壁際まで追い詰められた。

逃げ場はない。

私は山浪くんの顔に自分の顔を近寄せるだけ近寄せると、

「OKならOK」

と囁いた。

「…好きな人がいるから、無理…」

山浪くんが口を開いたので、自分の口で塞いでしまった。

だってそんな言葉は聞きたくないから。


しかも無理なはずの山浪くんは、何故か舌まで絡めて来たのだ。



廊下の暗闇で二つの軟体動物が静かに激しく絡み合っているのに、
その持ち主の心までは本人にもよくわからなかった。




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