HAPPY DAYS
その闇に聞こえて来たのは
何処か懐かしいギターの音色だった。



友達もいないボクを
お母さんが誘い出したのは、近くにある公立高校。



ここら辺では最高の難関校。



それを知ったのは大分後だったけど。



お母さんと出掛ける中学男子って
あんまりいないでしょ。



でもせめてそれだけでも喜ばせたくて
バザー会場に急ぐお母さんの後ろをのろのろと歩く。



校舎の一隅が小さなホールと化し
垂れ幕には「軽音MiniLive」
とある。



曲は昔に流行ったバンドのカバーだった。
題名は知らない。



生で楽器の演奏を聞いたのは初めてだ。



ギターとドラムは男子、ベースとボーカルは女子だった。



ギターのソロ演奏になると胸がいっぱいになった。



音で身も心も充たされて、恍惚となる。



自然と指がリズムを取った。



お母さんの姿を見失ったことも忘れ、
演奏が終わるとメンバーの近くまで寄ってくのを止められなかった。



「あの…」




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