HAPPY DAYS
真知子 DAYS
話し掛けて来たのは
まだ幼い面影が残る男の子だった。


演奏中から気付いていた。


聞いている、というより
まるで雷にでも打たれたみたいな、放心状態だったから。


だから早く片付けてこちらから話し掛けてあげようと
思っていたくらい。


でも彼は震えながら、私の傍に近付いて
何とか話し掛けて来たのだ。



私の父が他校の高校教師をしていて、
私達姉妹が小さな頃から
どんなに忙しくとも片手間ではなく
目を見て話を聞いてくれる人だった。


だから私も
彼の目を見つめて
ベースを片付ける手を止めた。



< 5 / 219 >

この作品をシェア

pagetop