HAPPY DAYS
RRRRRRR…





どれくらい時間が経ったろう。


携帯の着信で目が覚めた。


10時32分。


誰?


知らない番号。


ためらいもあったけど思い切って出た。


「瀧澤?」


山浪君だ。


「あれ?番号違いですか?もしもし?」


「…あ、ごめんなさい。もしもし?」


「もしもし?瀧澤?」


「うん、私。山浪君、だよね?」


山浪君の声は印象的。
水みたいな涼しい、澄んだ声。
山浪君の声を通すと、言葉は全て人を落ち着かせる呪文のようだ。


「瀧澤寝てた?だったらごめんな」


「ううん、起きてた」


小さな嘘。許される範囲だよね?


「今日、映画館で泣いてたの気になって。ごめんな。ボクが割り入ったみたいな感じで。」


気が付いてたんだ。


「違うの。あれは…」


「無理しないでいいよ。あ〜、あれは…何てゆうか…男って、彼女優先するのがダサいみたいな馬鹿な強がりしちゃう時あるから。でもボクが引くべきだったのが大前提で、本当にごめんなさい。」


「ううん、本当に全然違うから」


あんまり優しくしないで。


でないと泣きそう、かも。
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