HAPPY DAYS
毅は音楽の話となるといつも夢中だ。


オレが参加することになった曲を作るのだ、とギターを鳴らしながらコードを書き留める。


オレはピアノしかやったことないし、楽譜は読めてもコードは読めない。


毅が弾いてる明るいメロディは軽やかで、それでいて胸を締め付けるバラードだった。


「なんかいい。スタンダードみたいなちょっと懐かしい感じ。この美しき世界、みたいな」


「いいこと言うねえ」


毅はご満悦で掻き鳴らし、一気に作り切った。


「じゃあ、タイトルは、薔薇色の人生、かな?」


「日本語もいいけど、横文字のが感じ出るよ、この曲は」


「…じゃあ『HAPPY DAYS』は?」

「『HAPPY DAYS』か〜。どっかビートルズな雰囲気のタイトル。毅っぽい」


「じゃあボクっぽい歌詞付けてよ」


毅の歌は、メッセージ性が強く、歌詞がすごくいい。
なのに毅は、
毅を差し置いて、オレに歌詞を書けだと?


…無理、無理。


絶対無理!


「この前、授業で短歌作らされて、純の短歌を聞いたけど結構言葉のセンスあるよね?」


「そりゃどうも」


「いい歌詞書けるよ、請け負う。心配なら二人で作ろう、放課後どう?」


「10分で曲作るような毅がついてるなら簡単だね、きっと」


毅、オレの嫌味分かってないだろ?嬉しそうにギターを弾いている。
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