HAPPY DAYS
放課後、部室では見慣れない二人の顔に、空気が冷え冷えとしていた。


そうじゃなくても
純は軽音部員に嫌われてるし、
純は上の空で心ここにあらず。
瀧澤は思い詰めたように純を見詰めてる。



ボクがなんとかまとめないと
どうにもならない。



あ、これって真知子さんぽいやん。



「花巻は〜え〜ピアノでオリジナル曲で参加。だから借りる教室も、2−3でなくて、音楽室に変更するから」



「え〜?音楽室って別棟の1番奥だぜ〜誰も来ねえよ〜」


真っ先に文句を言うのはリードボーカルのボンだ。
ボンはいい奴なんだが、余り考えないでものを言う癖がある。

聞こえない振りをして、続ける。
「瀧澤は…吹奏楽で…なんだっけ?」


「私はピアノに自信があるから、花巻くんと連弾します」



「ふざけんなよ、だったら二人で勝手にやれよ」


ボンは完全にふて腐っていた。


「…瀧澤の希望は希望として、心に留めては置くけど、でもどうにもならないよ。軽音全体のバランスもあるし」


ボクは軽くボンをいさめて、瀧澤に諭した。


「大体瀧澤紀子さん、吹奏楽部の演奏だってホールであるでしょう?それを今更ほっぽり投げてこっちに来てさ、また直前に吹奏楽戻る可能性もあるよね?テキトーな人なんだからさ」


どんなに制止しても、
ボンは瀧澤の顔を覗き込むようにしながら詰め寄る。


瀧澤は全ての感情が失われたみたいな無表情で、聞いていた。


「じゃあ、私はどうしたらいいんですか?」


瀧澤の抑揚の失われた口調には、何処か圧倒させるような強さがあった。
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