HAPPY DAYS
毅はギターをいじりながら、オレにもいれてくれたコーヒーを飲んだ。

それはすごく慣れた仕種で、男のオレの目から見ても様になってる。

毅は大人になりかかってるんだ、とふと思った。


好きな人がいる、って言ってたが、毅はどんな女性を好きになるのか、
すごく興味が湧く。


ドサクサ紛れに聞いたら、すげえ叱られそうだけど。



「好きでもない子と付き合うって、別に良くあることじゃないの?ボクには有り得ないけど」


「付き合うって、オレには無理かも」


「何処ら辺が無理?」


「オレ…女の子苦手だな、多分」


「…え?…って男が得意…とか?」


「それ何だよ!」


オレはふざけて毅に飛び付いた。二人で取っ組み合ってると、何だか小学生に戻ったようで楽しかった。


息を切らして毅は言った。


「降参、降参。…でも純はまだ、彼女よりも友達なんだよ、きっと。軽音の奴らも、女の子と付き合うより、音楽や仲間が楽しいって。そんなもんだよ」


「毅は?」


「は?」


「毅はどっち?」


「どっちとは?」


「音楽?彼女?」


毅は座り直すとちょっと俯いた。


「ボクが音楽と出会えたのは、彼女がいたからだから」


そして、ギターを掻き鳴らした。






毅は幸せそうな顔をしていた。


好きな人の事を考えてると、あんな顔になるんだ、と恋の偉大さを知った。
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