HAPPY DAYS
翌週も軽音は楽しかった。


大勢だと紀子もそれほど苦にならない。


セッションしたり、カナメ祭のプログラムを決めたり、ロックカフェと名付けた喫茶店のメニューを決めたり、結構忙しい。


野郎ばかりの軽音で喫茶店のメニューとかは、紀子の独壇場だった。


みんな紀子のきめ細やかさや、物知り加減に驚いて、紀子はその逆を驚いていた。


1番反発していたボンまでが、紀子の提案を全て無条件で承諾し、仕舞いには相談していた。


「クッキーはいつ焼くの?」


だって。



紀子は普段通り親切で何でも出来て…、何て言うか…可愛いかった。


こないだ怒りを爆発させてから、紀子の何かが変わった。


生き生きしてるとゆうか、
キラキラしてるとゆうか、


とにかく、今までの取り澄ましたような、作り物の優等生ではなくなっていた。


今日初めて、紀子の魅力を理解できた気がする。


話し合ってる最中も、何だか紀子の口元ばかりが気になって、キスしたいと思ってる自分に気が付いて、戸惑った。


先週、紀子のキスから逃げ出して、君代にハグした癖にだよ。


「オイ、純、瀧澤の事、超ガンミ。ヒューヒューだな、ヒューヒュー」


とボンに囃されて、嬉しさが込み上げる。


紀子は?…と思うと、紀子は一気に無表情になった。


オレは机の下で紀子の足を突つきたいくらいなのに、冷たくなった紀子に、


フッ


と灯が消えたような寂しさを感じた。









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