HAPPY DAYS
教室がいつもと違って見える。

隣の毅も。

…紀子も。

…てゆうか、紀子もああするとあんな風になるんだろうか、と考えると、授業ドコロじゃなくなる。


紀子の細い首筋が白くて、あの肌の延長線上にあるものを連想するのは、清らかな襟足への冒涜だと思った、…思ったけど…


……オレ、ヤバすぎ。




そんなオレの変化に気付いたのは
何故かあいつだった。



おかげで一気に目が覚めたけど。



「瀧澤を変な目付きで見てたよな?」

お前だけには言われたくない、タカノがにじり寄ってきた。

「瀧澤は、お前みたいなにやけた男は相応しくない」


「じゃあ、タカノなら相応しいのかよ」


「…相応しい男になろうと努力はしている」


「で、オレに何の用なわけ?」


「瀧澤を解放してやってくれ」


解放?奴隷制じゃあるまいし。


「はあ?」


わざとらしい程強い口調で言い返した。


「瀧澤は吹奏楽を愛してた。瀧澤を自由にしてやってくれ」


タカノの芝居がかった台詞に、胸やけがしてきた。


「そんな話は瀧澤本人にしろよ」



それからオレは一日落ち着いた気持ちになれた。


ある意味タカノ、サンキュー。




でも、紀子。


吹奏楽、本当にいいのか?


オレと付き合っても一日もサボらなかった部活なのに、
オレの為に辞めて、後悔しないのか?


…オレの為に?


…昨日電話は毅にきてたじゃん。
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