超能力者が高校生!?
わたしの脱出を聞いたからか、パトカーがわたしの車を追ってきた。
「まずいな・・・」
このあたりは詳しくない。どこに行けばわからないし、下手すれば行き止まりにもなる。
「そこの乗用車。今すぐ車を左に寄せて止まりなさい!」
そんなことを言われて止まるやつがどこにいるんだ・・・。ましてや、麻薬を使っているなんて濡れ衣を着せられているならなおさらだ。
わたしは角を右に曲がった。このあたりならようやくわかる道だ。これを曲がるとすぐ行き止まりになる。それは承知の上での行動だった。考えがあったのだ。

「なあ、そこの角って行き止りじゃなかったか?」
「たしかそうだったな。よし、追い詰めるぞ」
「了解」
何度かこのあたりを巡回している警官ならわかっている道だった。
武本外科医院から電話が来たのは10分前のこと。麻薬の常習犯が病院に来たと言い、すぐに病院に駆けついたのだが、容疑者が見つからなかった。武本という医者は診療室で待っておくようにと言ったが、そこに容疑者の姿はなかった。仕方なく病院内を捜索していると、容疑者が車で逃げた。
そうして今容疑者を追い詰めているのだ。
「相手は麻薬の常習犯だ。何をするかわからないぞ」
「了解」
同僚に返事をしてから、車を右の角に入れた。
・・・までは良かったのだが、車がない。
「おい!嘘だろ!」
「さっき確かに・・・」
相手の車との距離は30mもなかった。絶対に間違えるはずがない。
「ど、どうする?」
「一旦引き返すぞ」
「りょ、了解・・・」
今度の返事には、多少の悔しさが交じっていた。

「・・・行ったか」
そう言いながら、私はゆっくりと力を抜いた。
実はパトカーが角を曲がる直前に、自分の力を車に集中させて姿を消していたのだった。幸いパトカーはこの路地裏にまで入れてこなかった。もし入れていれば、姿を消したとはいえ、そこにあることに変わりはなかったから、ぶつかった衝撃ですぐにばれてしまう。
「さて、これからどうしたものか・・・」
警察にまで私のことが伝わっているとなると、世間に伝わるのにさほど時間はかからないはずだった。それでは家族に迷惑がかかる。
それなら家族に1度会って、そして、縁を切ろう。
「とにかく急ごう」
言わなければならないことがたくさんあった。

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