liftoff
 ジルは、ジャケットを脱ぐと、バックシートに置いた。そして、ゆっくり、滑るように、車を発進させる。
「どこへ行くの?」
「プロンテープ岬だよ。その突端にある、崖の上のレストラン。夕陽が綺麗らしいんだけど、一度も行った事が無くてね」
 そういえば、この間、ツアーの中に組み込まれていた、プロンテープ岬のレストランは。その突端にあるレストランよりも下の方にあったっけ。それでも夕陽があんなに美しかったのだから、きっと、もっと絶景なのだろう。
 とはいえ、もう陽はかなり傾いていて、空は真っ赤に染め上げられている。
 早く到着しないと、夕陽を見ながらのディナー、とはいかなさそうだ。
 わたし達は、まるで、太陽と追い駈けごっこをしているような気分で、プロンテープ岬へと急いだ。
 やっと到着した頃には、夕陽は、水面に沈むか沈まないかという、際どいところだった。きゃぁきゃぁ言いながら、ごつごつとした道を、およそそんな道には相応しくない格好をして、わたし達は、急いだ。
 何とか日没直前、案内された席は、岬の先端、しかも一番海側だった。
 海に向かってテーブルセッティングがされていて、海側を向いて、わたし達は、隣り合わせで座った。ちょうど目の前に、荘厳な夕陽がある。
 メニューも放り出して、わたしは、目の前の景色に魅せられていた。
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