liftoff
 ーーだからでしょ、と、自分に強く詰め寄る。
 だから、あなたは彼に近づけなかったのよ。自分の本性を知りたくないと言ったけど、本当に知りたくなかったのは、彼の本性なのではなくて? 本当の彼を知ったら傷つくって決めつけて。ま、どっちにしても、臆病者なのは変わらないから、同じなんだけどね。
 ーーそうかも、と、わたしは、自分に白旗を掲げる。
 本当の彼の素性を知ってしまったら、わたしは、何故か、傷つくと決めつけていたのだ。その時、突然クラッとして、椅子に座っているのに、倒れそうになってしまった。
「!!」
 声にならない声を上げて、彼女達が、助けてくれた。
「だ、大丈夫? すごい汗……」
 わたしは、何とか体勢を整えて、ピニャコラーダを一口飲むと、
「ごめんね、少し、休むわ」
 と言って、机に突っ伏した。同じテーブルに、こんな風に突っ伏したわたしが居るなんて、彼女達に悪いと思ったけれど、そんなことも言っていられないほど、キツかった。肉体的に、というよりも、精神的に。少しの間だけでも、とにかく、全てを空にして休んでいたかった。こうして突っ伏して目を閉じていると、次第に、落ち着いてくる。
 何だか、テーブルの上が静かになったような気がして、思わず、顔を上げた。
 すると、彼ら4人が、心配そうに、わたしを見ていた。
「……帰ろうぜ」
 カイジがそう言って、愛想笑いをした。
< 46 / 120 >

この作品をシェア

pagetop