執事の憂鬱(Melty Kiss)
「どうぞ、お座りになって?
どこも空いていますけど、やっぱり紫馬さんの隣がいいわよね?」
真顔で言われてどう答えればいいのか。
実直な清水は口篭る。
オールバックの黒髪を、わけもなく撫で上げ、なんとなく所在無くてそのまま紫馬の隣に腰を下ろす。
女性はその様子に注視する気はないようで、手際よく空いたコップを片付けると紫馬を見てうっとりしたような笑みを浮かべると清水にその目を向けた。
「あなたもウィスキーのロックでよろしいかしら?」
「ええ」
言外に紫馬はいつもここでウィスキー・オン・ザ・ロックを飲んでいると女が伝えてきた。清水はそれを受けて頷く。
グラスにぴったりの丸い氷が入ったウィスキーが二つ、テーブルに置かれた。
「じゃあ、私はしばらく出かけてくるわね。
ごゆっくり」
女性は返事すら聞かず、表から出て行った。
「……いいのかよ?」
清水が目を瞠る。
「駄目だったら、出て行かないんじゃない?」
紫馬は午睡する獣のような剣呑な瞳で笑って見せた。
「そりゃそうだけど」
まさか、店のママが出て行くなんて予想していなかったので、清水は素直に面食らう。
その様子を見て、ほんの一瞬。
紫馬が黒い瞳に切なさを乗せた。
「気が利き過ぎる女なんだよ」
どこも空いていますけど、やっぱり紫馬さんの隣がいいわよね?」
真顔で言われてどう答えればいいのか。
実直な清水は口篭る。
オールバックの黒髪を、わけもなく撫で上げ、なんとなく所在無くてそのまま紫馬の隣に腰を下ろす。
女性はその様子に注視する気はないようで、手際よく空いたコップを片付けると紫馬を見てうっとりしたような笑みを浮かべると清水にその目を向けた。
「あなたもウィスキーのロックでよろしいかしら?」
「ええ」
言外に紫馬はいつもここでウィスキー・オン・ザ・ロックを飲んでいると女が伝えてきた。清水はそれを受けて頷く。
グラスにぴったりの丸い氷が入ったウィスキーが二つ、テーブルに置かれた。
「じゃあ、私はしばらく出かけてくるわね。
ごゆっくり」
女性は返事すら聞かず、表から出て行った。
「……いいのかよ?」
清水が目を瞠る。
「駄目だったら、出て行かないんじゃない?」
紫馬は午睡する獣のような剣呑な瞳で笑って見せた。
「そりゃそうだけど」
まさか、店のママが出て行くなんて予想していなかったので、清水は素直に面食らう。
その様子を見て、ほんの一瞬。
紫馬が黒い瞳に切なさを乗せた。
「気が利き過ぎる女なんだよ」