執事の憂鬱(Melty Kiss)
「ヒデさんも、どう?」

学生時代の呼び方を引きずり出してきて、紫馬が問う。

「結構です」

「あ、吸わないんだっけ?
ま、身体には良いよな」

頑なに態度を崩さない清水を、気に留めるでもなく紫馬は紫煙を吐き出しながら、相変わらずの砕けた口調で話し続ける。

「大雅くんも、うちの姫の前でだけは禁煙しちゃってるのよ。
細かいこと神経質なんだよね。
彼、乙女座A型だったっけ?」

「生憎、そういう迷信には興味が無いもので」

清水は真面目に答えた。

くつくつと、紫馬が喉の奥で笑う。

「いいよ、気を遣ってくれなくて。
どうせ、俺はB型だし?お前は絶対にA型だろ?」

「世の中のB型全員敵に回しますよ?
そして、私がA型なのは、たまたまです」

全く。
なんなんだろうかと、清水が呆れた声で返す。

「まぁ、あれだ。
主治医としては、皆の生年月日や血液型を把握してるってことは結構重要なことなんだよね」

俺って偉い?と呟かなければ、きっと紫馬のことを偉いと思ったのに、と。
清水は心の中だけで呟いてみる。
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