[短]Chocolate~From Bitter~
3
2月14日。
今年もまた、バレンタインがやってくる。
「チョコ!」
ベンチで足を組み、大声で私を呼ぶ彼。
今日も子どもたちとその親たちは、私たちに好奇の目を向けてくる。
気にしても仕方がないので、まっすぐに彼のもとへ急ぐ。
仕方がない、というよりは、慣れてしまった、と言った方が正しいのかもしれない。
ベンチに座ると、彼は「今日は何のチョコレート?」と聞いてくる。
無邪気な笑顔が、今はただ、苦しい。
「……」
彼の質問に答えることはなく、チョコレートが入った箱を渡す。
いつもと違う私の態度に、彼は不思議に思ったのか、顔をのぞき込んでくる。
「…どうした?」
どうしてこんな日ばっかり、優しいのだろう……。