[短]Chocolate~From Bitter~

そして、それを見て「たいへんねえ」と笑う別の母親。

最低かもしれないけど…。

いなくなってほしい、と思った。

今すぐ私と彼をふたりきりにして。

最初で最後でいいの。

…今だけ。


願いはこんなに儚く、そして小さなことなのに。

どうして神様は、こんなちっぽけな願いさえも叶えてくれないのだろう。


「…ねえ」


最後だから。

ずっと気になっていたこと、ずっと聞きたかったこと、

ずっと知りたかったこと…。

ひとつでもいいから、記憶の中に、留めておきたい。


「彼女とは…うまくいってる?」

「…うん」

「そう…」


聞きたかったことをすべて聞いてやろう、と思ったのに、

それ以上言葉が出てこなかった。

< 18 / 30 >

この作品をシェア

pagetop