[短]Chocolate~From Bitter~
胸が痛くて仕方がないのは、私だけなのかもしれない。
10秒だったのか、1分だったのか、10分だったのか。
どれくらい時が流れたのかはわからなかったけれど、私が顔を上げることができず俯いていると、
彼は自分のポケットに手を忍ばせ、何かを探す動作をしていた。
やがて探し物が見つかったのか、手はポケットから引き返され、
そして、私の目の前へと姿を現す。
意味がわからずそのままにしておくと、
「…あげる」
彼はそう言って、握りしめた手のひらをひらいてくれた。
そこにあったのは、ネックレスでも指輪でもなく、
小さく、儚く、いまにも溶けてしまいそうな──雪だるまの、ストラップだった。
「…ゆきだるま…?」
「うん。」
彼の意図がわからなくて、私はまた、ストラップを見つめながら止まってしまう。
“受け取って”の意味なのだろうか。
でも、私が受け取ってもいいの?
本当はそれ、“彼女”にあげるためのものじゃないの?