[短]Chocolate~From Bitter~

今までに見たことがない笑顔で笑う彼を見て、

彼女のことが好きなんだなあ、としみじみ思い知らされた。

しばらくして彼は、パチン、とケータイを閉じて、

ストラップを無理矢理私の手のひらに握らせた。


「ちょっと……」


反射でそれを拒否しようとする体。

が、彼はそれでも引き返さない。


「お願いだから。もう、チョコをねだったりなんてしないから。
…もらって」


彼の言葉は残酷で、けれどどこか優しくて…。

私はストラップをしぶしぶ受け取る。

すると彼は「ありがとう」と笑った。

笑ったと同時に、ベンチから腰を浮かせ、振り向き、私の瞳をじっと見据える。

何もかもを見透かされてしまいそうで怖くなり、無意識に目をそらす。

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