[短]Chocolate~From Bitter~
そらして、足下に視線を移せば、数十分の間に降り積もった雪が、コンクリートを微かに白く覆っていた。
「…この1年、すごく楽しかったよ。
毎月14日が楽しみで仕方がなかった」
一方的にそう言って
彼は、私から遠ざかっていく。
ザクザク、と雪を踏みしめる音が私を支配して、涙がこぼれてしまいそうになる。
泣いてはいけないと、そっと自分に言い聞かせた。
自分で選んだ道だもの。
始まりと終わりは、いつだって細い糸で繋がっている。
始まりがあれば、いつか終わりがくる。
別れは何度も経験したし、涙なんて枯れるほど流したはず。
───なのに、どうして今更こんなに胸が苦しくなるの?
ストラップを握りしめたまま、彼が私の前からいなくなるのを、
俯いたままでひたすら待った。
涙をこらえ、引きちぎられるように痛む胸を抑えながら。
やがて雪を踏む音は消え去り、私が顔を上げたときには、一面を白の世界が支配していた。